ちょっと格好いい耐震補強の仕事にめぐり合いました。
両側の斜め格子が補強部材です。建物は厚木市内のS短期大学図書館棟ですが、閲覧室のレースのカーテン越しに見る斜め格子は、アルハンブラの透かし彫りにも似た繊細な雰囲気を漂わせていました。部屋の明るさは窓に庇が付いた感じで、窓を開けると山から秋の風がサーッと流れ込んできました。
■ 美しくなければ補強ではない
「耐震トレリス」と名付けられたこの鉄骨ブレースは、大成建設株式会社技術研究所研究員のNさんが開発したものです。斜材はH-125x125x6x9と小さいながら、座屈しないところに秘密があります。この建物補強では、地震エネルギー吸収性能がよく、少しでも制振効果が期待できるものをと探している時に出会いました。1台で300トンもの強靭さをもちながらも、美しくしなやかな「耐震トレリス」は、やはりイエペスの名曲演奏に通じる気品があります。幼児教育を専攻する女子学生が多い学園の図書室の窓に、ふさわしいものが出来たと思いました。
Nさんはいつも実験室にこもり、冗談も通じないのではと思うような朴とつな方ですが、すばらしい研究者と、一生懸命に造ってくださった地元桐生工務店監督の長島さん、そしていい仕事にめぐり合わせて頂いた株式会社アベ設計の阿部さん、皆さんのおかげさまに感謝しながら現場をあとにしました。
これからは「美しい耐震補強」に心掛けたいと思います。