2006年09月28日

伝統木構造

 江戸時代後期の民家の耐震性能を検討する仕事にめぐり合いました。いま、民家の再生利用や、民家と同じ構法で家を新築する人も増えるなど、伝統的な木造構法への関心が高まっています。

伝統木構造のねばり強さ
 古民家は田の字型の平面を基本とする一般的な住居です。束石から立上る柱に足固め、差鴨居、梁又は桁による架構と土壁が耐震要素であり、土壁部分は通し貫5段の軸組みとなっています。柱と梁、差物の継ぎ手は、ほぞ差し・込み栓を基本とする伝統的な仕口です。耐震性能の検討には限界耐力法を用い、地震の強さを震度7程度としました。なお、部材強度は新築時の値を用い、経年劣化による強度低減を掛けて総耐力を補正しました。計算結果をグラフ(表)で説明します。


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・グラフの縦軸は地震力及び建物の強さ、横軸は建物軒位置での水平変位量を表します。
・地震時の最大水平変位は軒のところで4cm、柱の傾斜角1/75、建物に入る地震力は18トン
 (ベースシアー0.78)程度。
・グラフ上のポイント1(傾斜1/120)までの地震力は主として土壁が引き受ける。
・ポイント1から3(傾斜1/40)までは、土壁と通し貫、差鴨居と柱による木造軸組が協働して
 地震力を吸収する。この変形段階では土壁にひび割れや一部に割落が発生する。
・おおよそこの程度の変形を繰り返している内に地震も収まってしまうが、このとき骨組みの
 保有水平耐力は21トンであり、地震力より大きいことから建物は倒壊しない。
・現代の制振部材の役割を果たした土壁などは補修されて、この後も永く使い継がれていく。

古来の棟梁たちが体で覚え伝えてきた木造技術は、すぐれた耐震性能に裏付けられていることに改めて感服しました。
木組みの美しい伝統木構造の住宅を、その技術とくらしの文化を共に受け継ぎ、伝えて行きたいものです。(摺木勉9/27)
posted by kozo at 15:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 伝統木構造 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする